Category|
Language|日本語
Contents|住宅巡礼
Author|中村好文
Publisher|新潮社
Publication date|2000/2/25-2000/4/25(4)
Type|ペーパーカバー
Pages|159
Size|185×258×14
Weight|
Price|YO-1300-370-1670-20210426
ここ数年、私は世界各地に今も現存する二十世紀の住宅の名作を訪ねる旅を続けてきました。建築家になるため、あるいは建築家であるためには旅が必須の課外授業であることを、私は学生時代にル・コルビュジエなどの偉大な建築家の経歴で知り、若いころから好んで旅をしてきましたが、住宅を巡る旅は、その旅好きに拍車をかける結果になりました。
小さな設計事務所を自営する私が、やりくり算段して時間と費用を捻り出し、多い時には年間に七回、日数にして三ヶ月ほど海外で過ごしたこともあります。
それぐらい度々海外へ出掛けていれば、飛行機での旅立ちにも慣れっこになりそうなものですが、それが、そうではありません。搭乗と出国の手続きを済ませ、空白の待ち時間をやり過ごし、旅客の行列の一員となってゆるゆると飛行機に乗り込み、指定の座席に沈み込んで安全ベルトをカチャリとかけると、胸の裡にヤレヤレの安堵感が拡がり、同時に年甲斐もなく旅立ちのワクワク、ドキドキの興奮が、どこか体の芯の方から滲み出して来て全身にしみわたり、とても通勤電車に乗り込んだ時のような平常心ではいられなくなるのです。(中村好文)
引用|住宅巡礼 中村好文